「従軍の足跡®」 実例(一部抜粋)
陸軍A氏の軍歴証明
都道府県により異なりますが、A氏の場合は陸軍兵籍と陸軍戦時名簿の写しが交付されました。
陸軍の軍歴証明ではこの2つがもっとも基本的な資料で、原資料の写しが交付される場合はこれらのいずれか、または両方が交付されることがほとんとです。
A氏の軍人としての履歴をほぼ完全に追うことができ、その点では分かりやすい事例です。
※ご家族のご了解を得た上で、陸軍の軍人であったA氏の軍歴証明解説の例をご紹介します。
「陸軍兵籍」と「陸軍戦時名簿」から
A氏の軍人としての履歴を読み取ることができます。
「陸軍兵籍」と「陸軍戦時名簿」から読み取れる3つの部隊
歩兵第48連隊昭和9年1 月~
- 最初は徴兵された時で、現役兵として昭和9年1月に歩兵第48連隊に入営、昭和10年11月に現役満期となり、予備役に編入されています。予備役になると、戦時などに必要に応じて召集されて軍務に就きます。
歩兵第56 連隊昭和13年6月~
- 次いで、日中戦争の勃発後、昭和13年6月に臨時召集を受け、当時中国浙江省の杭州にいた歩兵第56連隊に編入されています。
A氏は、香港の東にある「白耶士(バイアス)湾」に上陸した後、部隊と共に広州(広東)まで転戦しました。しかし病気のため内地に還送され、陸軍病院で治療を受けた後、昭和15年4月に召集解除となっています。【画像】陸軍兵籍(昭和13年)軍歴証明を読む上で、特に分かりにくいのが地名です。中国では漢字なので、崩してあると読みにくいのですが、この資料は比較的読みやすい字で書かれています。ただ、やっかいなのが誤字です。この資料には「紫湾鎭」という地名が登場します。「鎭」は街にあたりますが、「紫湾」は「柴湾」(江蘇省)の間違いです。こうした誤りは珍しくありませんが、たとえ地名に誤字があっても、可能な限り場所まで特定します。
また「波号作戦」の準備に従事したとありますが、これは「広東攻略作戦」を指します。
歩兵第148連隊昭和17年2月~
- その後A氏は、太平洋戦争の開戦直後に臨時召集を受け、また戦地に送られることになります。 今度の部隊は歩兵第148連隊で、行き先は当時イギリスの植民地だったビルマでした。陸軍戦時名簿には、昭和17年2月15日に門司港出発、3月26日に蘭貢(ラングーン)上陸と記されています。実際にはこの間、澎湖諸島(台湾)の馬公、サイゴン、シンガポールを経由しています。
単に記録の表面をなぞるのではなく、調査を加えることで
できる限り兵士の足跡を明らかにしていきます。
調査から分かる「従軍の足跡®」
A氏が上陸した時にはラングーンは既に日本軍によって占領されており、その後部隊は一気に北上してビルマ北部に進攻しました。A氏の陸軍戦時名簿では、「○○作戦参加」などの記述が続いた後、一番最後に「(昭和)十九年九月十四日騰越ニテ玉砕戦死ス」とあります。騰越(とうえつ)は中国の雲南省にあり、歩兵第148連隊を中心とする守備隊が玉砕した地です。ただ、単に陸軍戦時名簿の文字を追うだけでは、玉砕へとつながる流れが見えてきません。 日本軍のビルマ進攻作戦は当初の予想以上のスピードで進み、昭和17年5月末までには連合軍はビルマから一掃されました。しかし連合軍は、すぐさまビルマ奪回の態勢を整えます。雲南省とビルマ北部では、米軍の支援を受けた中国軍による反撃が開始され、日本軍は次第に追い詰められていきました。A氏の陸軍戦時名簿にも、こうした中国軍相手の戦闘に参加したことが記されています。日本軍は、ビルマからインド東部のインパールへの進攻を目指したインパール作戦を実施しますが、惨敗しました。騰越における日本軍守備隊の玉砕は、こうした流れの中で起きています。
中国軍の中に孤立した日本軍の騰越守備隊は、街の中央にある騰越城に籠城します。A氏も、その中の一人でした。騰越守備隊は、米軍機による空襲を受ける中、圧倒的な戦力を誇る中国軍に包囲されて、絶望的な戦いを強いられました。騰越での戦闘については、防衛庁防衛研修所戦史室が編纂した戦史叢書『イラワジ会戦―ビルマ防衛の破綻』に詳細に記されています。同書によれば、最終的には守備隊の生存者全員が敵陣に突入して玉砕したとありますが、実際には5~60人の兵が騰越城からの脱出を試みています。このことは、騰越の生き残りである吉野孝公氏の『騰越玉砕記』に記されています。 陸軍戦時名簿によれば、A氏は9月14日に戦死したことになっています。しかしこれはあくまでも騰越守備隊が玉砕した日であり、実際の戦死日は不明です。騰越城から脱出した可能性もゼロとは言えませんが、A氏の動向については、残念ながら陸軍戦時名簿以上の情報は得られませんでした。今となっては最期の状況を正確に検証することは事実上不可能ですが、それでもできうる限りの調査を行った上で報告を終わりました。
このように、戦争の大きな流れを概説しながら、
その中での所属部隊の動きを明らかにするとともに、
兵士個人がどのように行動したかを可能な限り追いかけていくのが「従軍の足跡®」です。
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